2007年5月20日

同人誌と表現を考えるシンポジウムに行ってきた

池袋で開催された、『同人誌と表現を考えるシンポジウム』に行ってきた。

会場はみらい座池袋(=豊島公会堂)、久しぶりだ‥‥いつ以来?コレ以来約4年ぶり2回目。

同人誌と表現を考える』と当たり障り無いタイトルが付されているが、わかりやすい言葉で書くと「とうとう同人誌におけるエロ表現について、偉いヒトがごちゃごちゃ言い出しちゃったよ~。コレはみんなに知っておいてもらわないと、たいへ~ん。あと、自浄努力はしてるんだから、それについてはアピールしといた方が良いよね」という感じか。

興味がある人が多かったからなのか、「池袋」というその筋の人が集まりやすい会場設定だったからか、開演時には2階席までかなり埋まっていた(豊島公会堂の収容人員は802人)。

プログラムは「主宰者挨拶」、「周辺概況の説明『バーチャル社会のもたらす弊害から子供を守る研究会』とは?」に続き、第1部「今、どうなっているのか~現場からの発言~」、第2部「どうすべきなのか~有識者討論~」、「質疑応答」という流れ。それを13:40~16:40のほぼ3時間でこなした。

主催は「同人誌と表現を考える会」、後援に「全国同人誌即売会連絡会」、「COMIC1準備会」、「日本同人誌印刷業組合」がついており、同人誌即売の主宰者、同人関連事業者といわゆる「こちら側」の有識諸先生がパネリストとして登壇され、それぞれの取り組み、持論を発言するというスタイルだった。

会場に来た参加者の内訳はサークル50%、スタッフ10%、一般30%、出版・印刷業界10%+取材メディア(挙手で判別)。


主宰者挨拶の後、同人誌生活文化総合研究所の三崎尚人氏から、「バーチャル社会のもたらす弊害から子供を守る研究会(‥‥長い、以下省略して、バ研)」という、悪の組織‥‥もとい、警察庁・竹花元安全局長(※1)の諮問委員会に関する説明。

このバ研というのは、「インターネットなどの普及によるバーチャル社会(‥‥)の発達から来る性情報の氾濫や、それに起因する犯罪から子供達を守ろう」という趣旨で提言をまとめることが表向きの顔だったのだが、ボスの竹花氏は研究会を使って、ネットやサブカルチャーの性表現に対しての法的規制に繋げたかったようだ。
結局、それは研究会の中の通常の感覚を持ったメンバーから阻止されてしまって、「業界・関連団体による自主規制を徹底せよと」いうレベルの提言を発表して、終わっている。

このバ研自体は提言を発表して終了していることに加え、竹花氏の警察庁退職後、松下電器に移籍しており、実質的に「表現に対する脅威」ではなくなったのだが、こういう「有識者」というのは、いつの時代にも出てくる(有害図書事件、児ポ法‥‥)、いわば、何度倒しても別の形で出て来る、戦隊モノの悪の組織みたいなモノであるので、常に目を光らせていなくてはならない。
目を光らせているだけではなく、いざというときに「自分たちはこういう方法で、自分たちの表現を時代にあった形で制限している」と言えるような状況にしておく必要もあるわけだ。


第1部は、同人誌即売会主宰者、同人誌印刷業組合、同人誌取り扱い書店による、現場での取り組みについての説明。

印象に残った点は、「印刷業者>コミックマーケット準備会(以下、準備会)・書店>準備会の消し(※2)の自浄システムが存在する」「男より女の方が意識が薄い」、「最近消し薄くないですか?」

自浄システム」については、まず、同人誌印刷業組合というのがあって(29社からなり、同人誌印刷の80~85%を占める)、勉強会やお互いに消しの意識合わせを行っているとのこと。
その判断基準として、「コミケ基準」なるモノがあり(基準といっても、明文化されているわけではなく、感覚的なモノで社会的状況や時代の気分によって変化しうる)、「コミケに持って行って大丈夫かどうか?」を、印刷業者同士で色々と話し合われたり、準備会に問い合わせを行っているそうだ。
同人サークルといっても、ウチはいわゆる「零細の同人ゲームサークル」であって、媒体はCD-Rで自分たちで出力できるアイテム数(100~150枚)しか持って行かないため、印刷屋と縁がないので、こういう情報は知り得ないことだった。

男より女の方が意識が薄い」‥‥そりゃそうだよな。性犯罪でお縄に就くのは、基本的には男。世の中の有識者が「犯罪予備軍」と称しておそれるのも「独身オタク男」。‥‥となれば、自然と成人男性向けサークルの方が意識はするモノだ。だが、わいせつ物陳列罪は女性向けサークルのJUNE、やおい、BLにだって適用されないわけではない。ご注意を。

最近、消し薄くないですか?」‥‥たしかに、90年代の同人誌と比較すると、そんな気もする(コミケ体験は遅かったが、同人誌、同人ゲーはWindows前の時代から買っていた)。まぁ、あの悪名高い「有害コミック騒動」から16年、21世紀になり、表現に関する考え方も多少変わってきたし、チェックする人が若くなっているというのも関係しているのではないだろうか?

‥‥そんな感じで、即売会主宰者、同人業界関係者の第1部は終了。

休憩を挟んで第2部。
第1部のパネリストは何らかの関わりを持つ「関係者」だったが、今度は法曹界、医学者、評論家、ライターという一歩引いた視点(そうでもないカモ)から見ている人たちの討論。

パネリスト紹介の後、最初にマンガ評論家・永山薫氏(はてな見た感じ、濃いおっちゃん)が提言した「同人やオタク文化に否定的な意見を言う人に対して、こちらがちゃんとやっていることを説明する必要がある。敵対的・攻撃的になって反論しても意味がない、」という言葉が、今日のシンポジウムの趣旨を殆ど言い切っていると思う。
このエントリの冒頭にあるように(バ研のくだり)、規制しようとする勢力に対しては、自然、敵対的になるわけだが、いつもそればかりだと芸がないし、発展的でない。

それ以降は、その話を肉付けしていくような内容で展開された。
伊藤剛氏(はてな)の「見たくない人たちの権利も、作りたい人・読みたい人の権利と等しく守られないといけない」という意見も重要だと思った(見たくない人たちは入ってこなければいいのに‥‥とも思うが、公共の場でそれを広げると言うことは避けた方が良いのだろうか)。

お仕事の都合で遅刻して来た、精神科医・斎藤環先生(wk)の精神医学に基づいた(?)の独自の理論が大いにウケていた。「ゲーム脳」論者とか「オタク=犯罪予備軍」論者を「全く根拠がない」と一刀両断。

その後、質疑応答があって、シンポジウム終了。


シンポジウムの全体の感想としては、パネリストが全員「こちら側」の人間であるため、基本的な意見の相違が無く、議論を戦わせるという部分が無かった点が物足りなく(今日の趣旨としては、それで良いのかな?)、また、壇上に「描いている人」という本当の現場の人間が居なかった点がちょっと残念だった。
でも、これだけ多くの人が現状の問題を意識していることが判ったことや、これまであまりアピールされてこなかった情報を知ることが出来たことが良かった。
話の中に故米澤コミックマーケット代表の話が何度か出てきて、やはりあの人は同人界のよりどころだったんだなぁ‥‥と思った。
「自分たちの表現は自分たちで自分たちの意志で守っていこう!」それが、先人達の遺志を継ぐと言うことでもあるんじゃなかろうか。

今度は反対論者を呼んで、公開論破するのは‥‥って、そんな勇気のある反対論者はいないか。野田某先生とか如何?

(※1)竹花氏は前東京都副知事でもある。石原慎太郎東京都知事の肝いりで治安担当の副知事に就き、青少年保護条例の強化や歌舞伎町浄化等を推進。
(※2)ココではモザイクぼかしなどの自主規制の総称と思ってください。

[Today's Tune:Lucky & Happy/林原めぐみ]

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